小説家と編集者(『作家超サバイバル』より)

作家とは切っても切れない仲の編集者という存在。彼らとはどう付き合っていくべきなのか?
知念実希人 2026.04.12
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 私は編集者をまったく信用していない。

 という、衝撃的な書き出しで今回もはじめてみたが、これは作家としてのテクニックの一つである。

最初に衝撃的なフレーズを使うことで読者の興味を惹くのだ。

小説でも同様で、特にミステリでは『最初の十ページまでに死体を一つは転がせ』とも言われている。

それは、だらだらと設定などを説明することなく、まずは事件を起こして読者を小説の世界に引き込む必要があるからだ。

 私も小説の冒頭では読者を小説世界の登場人物と同化させるために様々な工夫を凝らしている。よければ、ぜひお手に取ってみて下さい。

 閑話休題。編集者を信用していないというのは、彼らの人格を信用していないというわけでは決してない。そもそも、一概に編集者と言っても、当然色々な人がいる。

 デビュー直後の私を切り捨て、まったく連絡を絶った編集者や、私の許可なく勝手に原稿を書き換えた編集者には、給湯器が壊れ水風呂に浸かって飛び上がる呪いをかけ続けている。

 逆に、作家廃業寸前だった私の原稿を読んで、第二作目の『螺旋の手術室』を刊行してくれた編集者や、共に『仮面病棟』や『天久鷹央シリーズ』を作り上げて、売れっ子作家になる土台を作り上げたくれた編集者たちには、出来る限りの恩返しをしたいと思っている。

 では、私が編集者のなにを信用していないのか。それは、物語を作る能力である。

 新人作家や作家志望者の中には、小説は編集者とともに作り上げていくものだと思っている人が少なくない。

 確かに、漫画やライトノベルではそういうシステムをとる場合もある。

 しかし一般文芸では、物語は作家が全て一人で紡ぎあげる。編集者はその小説を読んで、「もっとスピード感が欲しい」とか、「もうすこし、キャラクターを魅力的にした方がいい」などのアドバイスはするものの、具体的にどうすればいいかの指示を出すことはほとんどない。

 当然だ。編集者ではなく、作家こそが物語を作るプロフェッショナルなのだから。

 編集者はあくまで、作家が紡ぎあげた小説に対して、さらに磨きをかけるための気付きを与えてくれるだけだ。

 では編集者は主になにをしているのか。原稿を読んで修正を提案し、イラストレーター、装丁家、校閲、営業部、エトセトラエトセトラ……

 本を刊行するために必要な人々とのやり取りを一手に引き受け、その作品が多くの人の手に取られるよう、様々な戦略を練ってくれる。

 これは、とてつもなく大変な仕事だ。編集者がそのストレスフルな仕事を引き受けてくれるおかげで、作家は創作に集中することができるのだ。

 さて、新人作家からよく「担当編集がプロットを通してくれない」という相談(愚痴?)を受けることがある。

 出版業界に詳しくない人に説明しておくと、プロットとは小説の設計図のようなものである。

(月末開始予定の『知念実希人の《小説で億を稼ぐ》超㊙創作・戦術塾ではプロットの書き方も教えます)

 

 作家の多く(特に新人作家は)はまず作品を執筆する前に、「こういう作品を書こうと思うんです」と担当編集者にプロットを提出する。

 担当編集はそれを見て作家と色々と打ち合わせをし、「これなら出す価値があるかも」と思えば、その企画を編集会議に掛ける。

 そこで、編集長や営業部に対して、「作家の誰々がこんな作品を書くと言っているので、刊行したいんです」とプレゼンテーションを行い、執筆してもらうか否かが決定されるのだ。

 そんな面倒なことしないで、作家が書きたいって言っているんだから、書かせればいいじゃないか。皆さん、そう思うかもしれない。しかし、残念ながらそんな単純なものではない。

 何故なら……

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